COVID-19ワクチンに期待、しかし気緩めず長期戦
新型コロナウイルの流行が人の流れとともにくすぶり、新規患者数が再び増加する日々のニュースで過剰に反応する気持ちもわかります。ただこのウイルスとの付き合いは長くなることを想定しておかなければなりません。そのため、今は冷静に準備を進めていく必要があります。
社会秩序となったソーシャルディスタンスから解放されるために,期待されるのが、集団免疫獲得のためのワクチンです。本来なら数年はかかるワクチン開発が,遺伝子技術の進歩によって1か月程度で完成しています。そして開発後に3相からなる臨床試験に入ります。通常の場合には臨床試験終了後に生産体制が整えられます。 しかし、今回はより早く量産体制が作れるように政府が体制整備を補助して,臨床試験と並行して進められています。
その臨床試験のエンドポイントは感染症発症の抑制効果ですが、今回は代替指標である抗体価評価となります。すでに無作為化二重盲検比較試験(開発中のワクチン投与群とCOVID-19と無関係なワクチン投与群による効果比較)において、有意な抗体・免疫反応が発表されています。ただし、現時点では反応した抗体が病気の発症を抑えるのか、その効果はどのぐらい持続するのかは不明です。
現在、数多くのワクチンが開発されています。その中で本邦と関連深い(国内生産・治験や輸入予定)ワクチンの中で最も先行しているのが、アデノウイルスを用いたベクターワクチンです。弱毒性のウイルスをベクター(運び屋)として,抗原蛋白を組み込んだワクチンになります。遺伝子発現量がDNAワクチンと比べて多いのですが、ベクターであるアデノウイルスに対しても抗体が産生される可能性があります。そのため複数回接種においては十分な効果が期待できないことがあります。
またこれらのワクチンで獲得した抗体によって,抗体依存性免疫増強(ADE:抗体と結合したウイルスが抗体の1部を認識する受容体からマクロファージに侵入し、病状を悪化させる因子を過剰に放出)が起きることも考えておく必要があります。安全性と有効性の最終評価には、大規模接種から1年は見ておかなければなりません。
このグラフは風邪を起こすコロナウイルスの流行曲線です。冬から春にかけて流行する特徴があります。COVID-19を発症させる今回のウイルス、SARS-Cov2は、これらの風邪を引き起こすコロナウイルスの仲間になります。
5月22日付けのサイエンスの論文でも、今後獲得されるであろう免疫に依存するものの、冬季に再流行しつつ、ソーシャルディスタンスなどは、2022年までは継続することが求められると予想しています。今後訪れる流行とさらに長く対応を迫られているこの時期こそ、今春の流行を乗り切った延長で漫然と臨むのではなく、自身の健康状態の確認を第一に地域での医療体制や社会体制の整備を一致団結して進めていくべき時です。
令和2年8月17日