花粉症・アレルギー増加、腸内環境こそ重要
平成23年のリウマチ・アレルギー対策委員会報告書によると、過去30年で小児喘息が5倍に増加しています。そしてもはや国民病となった花粉症、いったい何が現代で起きているのでしょうか?
アメリカで暮らすアーミッシュ、200年前からの自給自足の暮らしを今も続けている人たちがいます。
子供のころから家畜と触れ合い、加熱殺菌されていない生乳を飲んでいます。アーミッシュと都会で暮らす子供たちでは花粉症などのアレルギー性疾患の発症率が大きく違います。
口から体内に入り、腸管に運ばれていく様々な菌が彼らにアレルギーの起こりにくい体質を培っていくのです。無菌環境で育てたマウスは、免疫を担うTh2細胞が優位になり、IgE抗体を産生します。その結果、肥満細胞からアレルギー反応の原因であるヒスタミンが遊離されます。しかし、生後間もない時期に無菌環境下マウスに、通常の実験マウスの腸内細菌を移植することで、Th2細胞の働きを抑えることが判っています。
体を守るために外からの病原菌と戦う能力、免疫力を我々はもっています。そして誤って人間自身の細胞を攻撃させないよう、さらには口から食物などを利用できるよう、免疫力をセーブすることもできるのです。そのような自己防衛能力である免疫力を相手に応じて抑えることを免疫学的寛容と呼びます。その免疫学的寛容の司令塔の役割を胸腺などとともに演じているのが制御性T細胞です。花粉症の根本治療である舌下免疫療法は、この制御性T細胞を増やしてアレルギー体質を変えていく治療です。
バランスの取れた腸内環境が重要です。食物繊維は腸管内において短鎖脂肪酸を増やして、制御性T細胞を誘導します。それとは逆に安易に繰り返し投与される抗生剤は、腸内細菌叢・免疫を攪乱させアレルギーを起こしやすい体質を形成していくことになります。腸には1億以上の脳細胞数に匹敵する神経細胞があり、それらの神経細胞をも混乱させることにつながります。
平成30年3月22日