認知症周辺症状、めぐる悪循環
認知症の患者さんの妄想や徘徊などの周辺症状、その表現方法は認知症のタイプによって違います。ただし、患者さん自身が感じている現状と現実との食い違いに対する精神的苦痛や苦悩がその根底にあり、発端であることには変わりありません。
周辺症状は家族を困惑させ、その逸脱した軌道を修正しようと患者さんに対する要求という形で現れやすいものです。
しかし、その要求によって却って、患者さんに疎外感を抱かせるばかりか、より現実との食い違いを思い知らせることになってしまいます。その結果、患者さんの苦悩を一層高め、精神的な不安定さを誘発し、さらなる周辺行動を導く結果につながります。その場での軌道修正はご法度です。まずは非現実的なことでも共感してあげることが大事です。その上で、患者さんと一緒に解決法を見出そうとするか、解決策がない場合は優先順位を変えて、後回しにしましょう。
接し方の基本をまずは忘れてはいけません。患者さんに突然、後ろから声をかけることはご法度です。患者さんの目の前に回り込み、かつ視線の高さの位置を合わせましょう。
その上で、落ち着いたトーンでゆっくりと話しかけましょう。また周囲に雑音があるとその中から必要な情報を聞き分けることができません。もし関心がなければ、漫然とテレビをつけたままにしておくことはやめましょう。
患者さんの苦悩を和らげるものとして、懐かしい音楽を聴いたり、歌ったりする音楽療法があります。
また患者さんを包み込むような気持でやさしく触れてあげることでも、タクティールケアと呼ばれて効果があります。そして現実とのギャップを埋めるための見当識の改善目的で、季節の飾りや食材など無意識に現実の時を実感してもらえる工夫、リアリティーオリエンテーションなども日々の生活の中で活用していきましょう。
平成29年8月24日