習慣的なイソジン咳嗽は止めましょう
先日、風邪でのどの調子が良くないので、しばらくイソジンでうがいしているという患者さんが来られました。また以前、毎日朝、寝る前に風邪の予防のためにイソジンでうがいをしているという高齢者もおられました。イソジンうがい液の主な成分はヨードです。過剰なヨードの摂取によって、ウォルフ-チャイコフ効果、すなわち甲状腺ホルモン合成が抑制されて、甲状腺機能低下を招きます。
多くの人は一過性ですが、元来甲状腺に病気を持っている人や一部の健康人においても甲状腺機能低下症を招くことがあります。甲状腺ホルモンを作るために、1日に摂取すべきヨードは、0.15mg程度です。
日本人は、元来、海藻を料理に使うため、ミネラルとしてのヨードは多く摂っています。また高血圧や高脂血症に効能があると、根昆布水が宣伝されており、それらを習慣的に摂取していることでもヨード過剰になります。
うがいの際にすべてを飲み込むわけでは、ありませんが、健常人18人に1日3回、15秒のイソジン咳嗽を行ってもらい、尿中のヨードを測定した報告があります。その結果は平均して1日4mgのヨードが吸収されていました。うがいの回数や希釈方法などで、ウォルフ-チャイコフ効果は十分起こすことが判ります。
果たしてイソジンでのうがいは意味があるのでしょうか?上気道感染発症を水道水と比較した報告がありますが、結果的には水道水に勝っていません。
またウイルスに対する殺菌効果よりも、細菌に対する効果の方が強く、口腔内の正常細菌叢を破壊し、希釈が不十分だと粘膜障害を招く可能性もあります。
風邪などのウイルス感染予防には勧められません。また、化膿性扁桃炎などの溶連菌感染に対しては、抗菌薬の中で、切れ味が最も優れるペニシリン系抗菌薬を十分量しっかりと内服することが再発防止にも優れています。
平成28年8月22日